bye4




もう終わりにしよう、なんて言葉。
俺は言う事が出来るかな?


Night date


いつものように書類に向かいながらペンをはしらせていると、中尉が声をかけてきた。

「大佐、エドワード君から電話です。」
「鋼のから?まわしてくれ。」

―――驚いた。
彼から連絡が来るとは。

“あの日”から約1週間がたった。

その期間に彼からの連絡はなく、自分から連絡する勇気さえでなかった。
連絡したところで自分は彼に何を話せば良いのか。
無論、あの言葉の意味など訊けるはずがなかった。

『あ、俺だけど。ちょっと良い?』

流れた時間以上に、久しく聞いた彼の声はいつもと変わらずあの日のことがまるで嘘のようで。

「あー、かまわないよ。久しいな。」
『あーそうだな、久しぶり。』
「まだ中央にいるのかい?」
『うん、後少し滞在する予定。』
「そうか・・・」
『なぁ、ちょっと良い?』
「…ああ。」

何を訊かれるのかを、緊張しながら待った。

自分に都合の悪い話ならいつでも電話を切る事が出来る。
電話を握る手が少しだけ震えていた。

『あのさ、今日の夜・・・会えない?』
「…え」

今、彼はなんと言った?

『だから、今日会えるかって訊いてんだよ!』

彼の声のボリュームが上がり上ずった声になっているところからみると、相当緊張していた事が分かる。
そんな彼の様子を思い浮かべて思わず笑ってしまった。

「ああ、もちろん会えるよ。」


半笑いのままに返答する。
彼からの言葉を聞いて、正直驚いた。

『一回で聞き取れ馬鹿!』
「まったく、君は上司に向かって随分な言い草だな。私はただ驚いただけだというのに。」
『?』
「まさか君からデートの誘いが、」
『わー!勘違いすんな!そんなんじゃないからな!』
「ははは、分かったから落ち着きなさい。」

弁解するほどの事でもないだろうに、と言ってやると彼はまた怒ったようで、それがまた可愛らしくて愛おしい。

『とにかく!今日の7時に司令部の正面入り口で待ってるからな!』
「わかった。7時にね。」
『おう。』
「楽しみしているよ。なんたってデートだからね。」
『馬鹿!』

そう一言吐き捨て、彼は電話を切ってしまった。
受話器の向こうからは彼の声ではなく、ツーツーと一定に繰り返される機械的でなんだか寂しい音のみが聞こえる。
それでも自分の気分は落ちることなくどんどん向上していく。

「まったく可愛いやつめ・・・」

“あの日”の心配などどこかに吹き飛んでしまったあたり、自分も随分と単純に出来ているんだと自覚して笑みがこぼれる。


―――…それが最後になるとも知らずに。


「さて、仕事を終らせてしまおうか。」



to be continued・・・



2/11 加筆修正

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